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税理士 公認会計士
20代税理士の市場価値はどれくらい?合格率や有利な理由について解説
税理士試験の受験には年齢制限がないため、20代で税理士になることも可能です。20代で税理士になると、30代以降で税理士の資格を持つよりも市場で有利になりやすいといわれており、学生のうちから税理士をめざす方もいます。20代で税理士になると、なぜ有利になるのでしょうか。
本記事では20代税理士の市場価値や、20代で税理士資格を保有すると有利な理由など、20代税理士の価値について解説します。年齢別の合格率や20代で税理士資格を取得するための勉強方法なども紹介しているので、ぜひ参考にして資格の取得を検討してみてください。
目次
20代税理士の市場価値
税理士と聞くと、中高年が活躍しているイメージを持つ方もいるでしょう。確かに税理士業界ではベテランが多数活躍していますが、20代税理士の価値を高く評価し、積極的に雇用している会計事務所も存在します。年齢を問わず活躍できる職業ですが、なぜ20代の税理士の市場価値が高いといわれるのか、その理由を3つ解説します。
ポテンシャルがある
20代の税理士は経験や実績がベテランには劣ることが多いものの、その分能力やスキルに伸びしろがあり、経験を積むことで優秀な人材となれる可能性があるのが強みです。
長期にわたって活躍してもらえる
経験豊富な40代の税理士を雇った場合、即戦力を期待できる一方、定年までの年数が若年層より短くなるところがネックです。一方で20代税理士は、長期的に活躍する貴重な人材となり得ます。人材育成に多少の時間を要するとしても、活躍する期間の長さを考え、あえて20代税理士を採用するケースもあるようです。
柔軟性がある
会計事務所と一言でいっても、その特徴や社風、ワークフローなどは事務所によって異なります。他の事務所で活躍してきたベテラン税理士を雇用する場合、経験が役立つ一方で前の職場のカラーが残ってしまい、新しい職場になじむまでに時間がかかってしまうこともあるでしょう。その点前職での経験が比較的短い20代税理士は、新しい職場や環境にもスムーズに順応できる可能性が高いといえます。
年齢別税理士資格の合格率
国税庁は、毎年実施される税理士試験の結果を公式Webサイトで公表しています。令和5年度の税理士試験は、32,893人が受験し7,125人が合格しました。年齢別の受検者数、合格者数、合格率は以下のようになっています(※)。
|
受験者数 |
5科目到達者数 |
一部科目合格者数 |
合格者数合計 |
合格率 |
41歳以上 |
11,362人 |
269人 |
1,219人 |
1,488人 |
13.1% |
---|---|---|---|---|---|
36~40歳 |
4,619人 |
97人 |
865人 |
962人 |
20.8% |
31~35歳 |
4,973人 |
107人 |
1,061人 |
1,168人 |
23.5% |
26~30歳 |
4,916人 |
74人 |
1,258人 |
1,332人 |
27.1% |
21~25歳 |
5,695人 |
53人 |
1,641人 |
1,694人 |
29.7% |
20歳以下 |
1,328人 |
– |
481人 |
481人 |
36.2% |
合計 |
32,893人 |
600人 |
6,525人 |
7,125人 |
21.7% |
上記のデータを見ても分かる通り、最も合格率が高いのは20歳以下です。20歳以下の受験者のうち3割以上の方が試験をパスしています。次いで21~25歳の合格率が29.7%、26~30歳の合格率が27.1%であり、年齢が若いほど合格率が高いことが分かります。
若い世代ほど合格率が高い理由として考えられるのは、大学生や大学院生であれば社会人と比べて勉強時間を確保しやすいことや、勉強する習慣があまり失われていないことなどです。
20代で税理士資格保有が有利な理由
20代での税理士資格保有が有利とされるのには、2つの理由があります。それぞれ詳しく解説します。
20代の税理士は希少
20代は税理士試験の合格率が高いと説明しましたが、資格取得後に20代のうちから実際に税理士として活躍している方は他の世代に比べると少数です。日本税理士会連合会によると、現役税理士の年齢層で最も大きな割合を占めているのは60歳代で30.1%、次いで50歳代が17.8%、40代が17.1%となっており、現役税理士の半数以上が40代以上となっています(※)。一方で20代の税理士は全体のわずか0.6%と少なく、希少な存在であると分かります。市場価値が高いことに加え、希少性もあることから、20代で税理士資格を保有していれば就職や転職活動でかなり有利となるでしょう。
ポテンシャル採用の増加
人手不足が慢性化している現代では、長く活躍できるポテンシャルのある人材が求められています。ポテンシャルの高い20代税理士の採用を積極的に行う事務所も複数あるため、自分の要望や希望に合った職場を選びやすくなるでしょう。
学生が税理士をめざすべき理由
税理士試験は全11科目のうち、会計学に属する科目から2科目、税法に属する科目から3科目の計5科目に合格する必要があります。このうち会計学に関しては受験資格要件がないため、学生のうちから誰でも受験することが可能です。
残りの税法に属する科目については、学歴か資格、職歴のどれかが必要になるので社会人になってから挑戦することが一般的ですが、大学で社会科学に属する科目を含み計62単位以上を取得していれば、どの学部の学生でも受験することができ、専修学校の専門課程(①修業年限が2年以上かつ②課程の修了に必要な総授業時数が1,700時間以上)を修了し、社会科学に属する科目を1科目以上履修した方も受験可能です。また資格による受験資格では日商簿記検定1級あるいは全経簿記能力検定上級の合格でも受験資格を得ることができます。
税理士になりたければ、学生の頃からめざすべきだといわれています。その理由は、大きく分けて2つあります。
資格取得後の活躍期間を延ばせる
税理士試験において、1回当たりに受験できる科目に制限はありませんが、5科目全ての範囲を網羅した上で受験するのは至難の業です。そのため1回につき1~2科目を受験し、3年程度かけて税理士の資格をめざすのが一般的です。
ただし残念ながら不合格となってしまった場合など、資格取得までにさらなる時間を要するケースもあります。一度合格した科目の実績は生涯にわたって有効なので、一から試験をやり直すわけではありませんが、受験する方によっては5科目全てに合格するまでに10年以上の時間を要する方もいます。上記で紹介した年齢別合格率のデータで、41歳以上の受験者数が突出して多いのは、何年もかけて受験する方が一定数いるためです。
税理士の資格を取得するまでには数年単位の時間が掛かることもあるため、学生のうちから税理士をめざした方が、資格取得後の活躍期間を延ばせます。
科目合格の時点で就活で有利になる
学生のうちに会計学に属する1~2科目に合格していれば、新卒時の就活で有利になる場合があります。特に税理士資格の取得をサポートしてくれる事務所に就職できれば、社会人として働きながら税法に属する科目への合格をめざしやすくなるでしょう。
20代で税理士資格を取るための勉強方法やスケジュール
20代で税理士資格を取得するためには、明確な目標や学習計画を立てることが大切です。ここでは20代で税理士資格を取るための勉強法やスケジュールの立て方のポイントを5つご紹介します。
科目ごとの学習時間をチェックする
税理士試験では会計学に属する科目と税法に属する科目を受験する必要がありますが、科目によってボリュームや難度が異なります。例えば、会計科目の必須科目である簿記論と財務諸表論は、ともに450~500時間が勉強時間の目安とされています。科目ごとに必要な勉強時間の目安を確認しておくと、より具体的な学習スケジュールを立てやすくなるでしょう。
一週間の学習スケジュールを立てる
前述した科目ごとの勉強時間の目安を基に、一週間の学習スケジュールを立てます。例えば簿記論の合格をめざすなら、一年は約52週間なので、500時間÷52週=9.6時間の勉強時間を一週間に盛り込むようにします。どの曜日にどのような勉強をするか、自分のライフスタイルに合わせてスケジュールを立てるのがポイントです。
あまり無理な計画を立てると、モチベーションが低下して気力が落ち込む原因になりかねません。一週間の学習スケジュールは基本的に一年間ずっと続けるものなので、継続できる現実的な計画を立てることが大切です。
すき間時間を有効活用する手段を探す
まとまった時間を使って集中して勉強することも大切ですが、移動時間などちょっとしたすき間時間をいかに有効活用するかも重要なポイントです。通学・通勤時間など毎日定期的に生じる時間はもちろん、講義が始まるまでの待ち時間など、ふとしたときに生じた時間も無駄にしないよう、普段から暗記用のノートを持ち歩くのをおすすめします。
また税理士試験対策に役立つアプリなどもリリースされているので、スマートフォンにインストールしても良いでしょう。
計算・理論の両方をバランスよく勉強する
税理士試験の出題内容は、簿記論(計算のみ)と国税徴収法(理論のみ)を除く全ての科目に理論と計算の両方を含んでいます。そのため税理士試験の勉強をする際は、計算と理論どちらかに偏ることなく、両方をバランスよく学習していく必要があります。
どちらか一方が得意でもう片方を苦手としている方は、得意な方ばかり集中して勉強してしまう傾向にあるので、あらかじめ学習スケジュールに理論と計算のどちらを勉強するか明記した方が良いでしょう。
取捨選択のスキルを身につける
税理士試験は試験時間に対して出題数が多く、制限時間内で全ての問題を解くのは難しいといわれています。一つの問題に固執し過ぎると、全ての問題に目を通す前に時間切れとなってしまい、空欄のまま提出せざるを得なくなる可能性もあるでしょう。
税理士試験では解く問題と捨てる問題を即座に見極め、迅速に問題をこなす必要があります。もちろん問題を捨ててばかりいると合格点に届かなくなる恐れがあるため、試験の傾向と対策を踏まえ、さまざまなバリエーションの問題を解く能力を習得しておくことが大切です。
20代で税理士資格を取った場合のその後
20代で税理士資格を取得したら、その後にするべきことがあります。どのようなことが必要なのか解説します。
税理士の登録を行う
税理士になるためには、税理士資格を保有するだけでなく、日本税理士会連合会に備える税理士名簿に登録する必要があります。税理士名簿への登録を行うには、税理士となる資格を保有するとともに、会計に関する事務等に従事した期間が通算2年以上あることが必須です。
実務経験については税理士試験合格前に積むことも可能なため、学生のうちに1~2科目に合格した後、会計事務所に就職して実務経験を積みながら残りの科目合格をめざせます。また学生のうちにアルバイトとして実務経験を積んでおくことも可能です。
税理士名簿への登録手続きの際は、所定の税理士登録申請書や身分証明書などの書類が必要です。登録を受けようとする税理士事務所等の所在地を含む区域の税理士会を経由して、日本税理士会連合会に提出します。
なお税理士に登録する際は、書類以外に以下の手数料が必要になります。
登録免許税 |
6万円 |
---|---|
登録手数料 |
5万円 |
登録時研修費用 |
5万円 |
税理士会入会金 |
4~5万円 |
税理士会年会費 |
約10万円 |
税理士会入会金および年会費は入会する税理士会によって金額が異なるので、あらかじめ問い合わせておきましょう。
就職・転職先を決める
税理士への登録を済ませたら、正式に税理士として働けるようになります。税理士の主な活躍場所は以下の通りです。
- 税理士事務所・会計事務所
- コンサルティング会社
- 企業の税務課
中でも税理士事務所や会計事務所への就職、転職が一般的です。実務経験を積んだ事務所でそのまま税理士として雇用されるケースもあれば、新たな事務所に転職するケースもあります。入社当初はベテラン税理士の補佐役として働くことが多いですが、経験を積めば一人で案件をこなせるようになり、将来的に独立起業をめざすことも可能です。
税理士としての知識を生かし、コンサルティング会社で働くケースもあります。特に大手企業は些細な税法の解釈ミスが多額の損失につながる場合もあるため、税理士のいるコンサルティング会社に支援を依頼することがあります。税理士のいるコンサルティング会社は重宝されやすいため、有望な就職・転職先の一つとなるはずです。
また一般企業の税務課で働くのも一つの方法です。自社に税務のプロがいれば、外部企業にアウトソーシングする必要がなくなるため、重宝される可能性があります。さらに企業の内情を知っていれば、将来的に独立開業した際、経営面のアドバイスを提供することも可能になるでしょう。
このように、税理士が活躍できる場所は複数あるので、まずはご自分が税理士の資格を活かしてどのように働きたいのか、そのビジョンを明確にすると良いです。
20代で税理士資格を取得すれば就職・転職で有利になる
20代で税理士資格を取得し、現場で活躍している方は他の世代に比べて少数です。そのため税理士業界での市場価値は高く、就職や転職で有利に働きます。ただし20代で税理士試験の5科目に合格するのは簡単なことではないため、綿密な学習スケジュールを立てつつすき間時間を有効活用したり、取捨選択のスキルを習得したりすることが必要です。より効率的に税理士資格の取得をめざしたいのなら、独学よりも専門学校などでプロの講師に勉強のコツやポイントを教えてもらうことをおすすめします。
仙台大原簿記情報公務員専門学校では、全国トップレベルの税理士試験の合格実績がある学校であり、自分に合ったペースで税理士試験合格まで学習できる1年制~4年制の税理士をめざすコースを設けています。簿記の基礎から学べる初心者向けのコースもあるため、一から税理士をめざしたい方にもおすすめです。また在学中に税理士試験の3科目以上に合格した場合、卒業後も次の税理士試験まで授業料免除で学習できるサポート制度(税理士合格サポート制度)も整えています。20代のうちに税理士資格の取得をめざしたい方は、ぜひ仙台大原簿記情報公務員専門学校 税理士・会計士系コースへの入学をご検討ください。
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