コラム
COLUMN
公務員 再進学(学び直し)
既卒で公務員をめざす方法とは?厳しいと言われる理由やめざすときの流れについて解説
既卒で公務員をめざすことは可能ですが、新卒で公務員をめざす場合や、民間企業の採用を受ける場合とは、いくつか異なる点があります。既卒で公務員をめざすのであれば、適切な準備をするためにも、メリットやデメリット、注意点などを事前に把握しておくことが大切です。
本記事では既卒者で公務員が厳しいと言われる理由や、めざすときの流れ、公務員試験のポイントについて解説します。
目次
既卒で公務員が厳しいと言われる理由
以下では、既卒で公務員が厳しいといわれる理由について紹介します。
既卒の合格率が公表されていないから
公務員試験は、新卒と既卒の合格者の割合が公表されていないため、既卒には厳しいといわれています。しかし厚生労働省の調査によると、民間企業において新卒の採用枠で既卒を採用した企業は全体の38%なので、新卒よりも既卒の方が就職率が低いと判断できます(※参考:厚生労働省「労働経済動向調査(令和5年8月)」の概況より既卒者の応募可否及び採用状況)。このことから、公務員の場合も新卒より既卒の方が就職率が低いと考える人もいるようです。
空白期間があると不利そうだから
民間企業の場合、「働いていない空白期間があると採用に不利になる」と言われており、公務員も同様であると考える人もいるようです。
しかし、実際の公務員試験は経歴に関わらず、試験結果や人柄からフラットに評価されます。そのため、空白期間があっても問題ありません。ただし、「なぜ既卒なのか?」など、面接で空白期間について聞かれたときの回答は用意しておくとよいでしょう。
既卒の方に公務員が人気の理由
既卒で公務員をめざす人が多いのはなぜでしょうか。以下では、既卒の方に公務員が人気の理由を紹介します。
雇用や給与が安定している
まず、公務員は収入が安定しやすいため、既卒に人気があると考えられます。民間企業は成果や業績次第で給与額が変化する場合がありますが、公務員は基本的に年功序列で給料が上がっていきます。国家公務員の経験年数ごとの平均給与月額は次の表のとおりです(※参考:人事院給与局「令和5年国家公務員給与等実態調査報告書」より第7表 適用俸給表別、経験年数階層別)。
経験年数 |
平均給与 |
---|---|
1年未満 |
19万2,416円 |
3年以上5年未満 |
21万8,624円 |
10年以上15年未満 |
29万3,883円 |
20年以上25年未満 |
36万8,008円 |
35年以上 |
41万3,068円 |
また、地方公務員の一般行政職の場合、経験年数ごとの平均給与は次の表のとおりです(※参考:総務省「令和4年 地方公務員給与の実態」より全地方公共団体 一般行政職)。
経験年数 |
平均給与 |
---|---|
1年未満 |
18万1,004円 |
3年以上5年未満 |
20万3,652円 |
10年以上15年未満 |
27万2,521円 |
20年以上25年未満 |
35万6,333円 |
35年以上 |
36万9,700円 |
社会的信頼がある
また公務員は民間企業で働いている人より、社会的信頼が高い傾向にあるため、既卒に人気があります。社会的信頼がある理由としては、公務員が民間企業のように業績不振などによるリストラがなく、安定的に働けるからです。住宅ローンや賃貸契約の審査が通りやすくなるなど、さまざまな部分でもメリットを感じられるかもしれません。
国や地域のために働ける
さらに国や地域のために働けるのも、公務員が既卒に人気の理由です。公務員は行政や法律、政治など人々の暮らしに欠かせない仕事なので、「世の中のために働きたい」「地域のために貢献したい」と思っている人にとって魅力的であると考えられます。国に貢献したい人は国家公務員、地域に貢献したい人は地方公務員を選ぶとよいでしょう。
休暇が多い
最後に、公務員は休暇が充実しており、既卒に人気です。特に特別休暇に関してはかなり充実していて、カレンダーどおりの休みに加え、ボランティア休暇や結婚休暇、育児参加休暇などがあります。
また、公務員は民間企業よりも有給休暇を取得しやすい傾向です。公務員は休みたいときに休める職場環境である場合が多いため、ワークライフバランスを重視している人にも魅力的であると考えられます。
既卒で公務員になるメリット
既卒は勉強時間を十分に確保しやすいというメリットがあります。公務員試験は難度が高く、ある程度の勉強時間が必要ですが、勉強時間を確保しやすい既卒は有利といえるでしょう。
また、既卒という経歴が不利にならないのもメリットとして挙げられます。民間企業では経歴や学歴、スキルが選考基準です。一方、公務員試験では能力や適正を評価するため、既卒という経歴は選考が問題となりにくいと考えられます。
既卒で公務員になるデメリット
既卒で公務員になるデメリットの一つが、民間企業への転職が難しいことです。民間企業は営利目的、公務員は非営利目的で仕事をする性質上、求められるスキルが大きく異なります。そのため、民間企業が求めるビジネス感覚が身に付いていなければ、働くスキルが不足していると評価され、採用に至りにくいかもしれません。またこのような転職のハードルは、年齢を重ねれば重ねるほど高くなるでしょう。
既卒で公務員になるまでの流れ
既卒が公務員(大卒程度)になるまでの流れは以下のとおりです。
- 出願(3月、4月頃〜)
- 一次試験(5月、6月頃〜)
- 二次試験(7月、8月頃〜)
- 採用面接
- 内定(8月、9月頃〜)
なお、一般的な公務員試験のモデルケースなので、自治体や試験種、年度により異なる場合があります。
出願(3月、4月頃)
公務員試験を受けるには、まず出願書類の提出が必要です。毎年2〜5月頃になると各自治体・職種ごとのホームページに試験内容が公表されます。公表後、3月〜4月から受験受付が始まるので、申し込み忘れがないようにしましょう。
一次試験(5月、6月頃)
一次試験は筆記試験です。形式としては5択のマークシート方式であり、教養試験、専門試験、論文試験が一般的にあります。
二次試験(7月、8月頃)
二次試験は一次試験の合格者を対象に面接が行われます。個人面接が基本ですが、自治体によっては集団面接や集団討論が行われる可能性もあります。最近の公務員試験では、面接が重要視される傾向があるので、しっかり対策しておきましょう。
採用面接
二次試験の合格者を対象に個別面接が行われます。採用面接は受験者の意思確認をする場となっており、「併願しているか?」「いくつかの試験に受かった場合どうするのか?」などと聞かれる可能性があります。採用面接は意思確認の場ではあるものの、最後まで気を抜かずに対策しましょう。
内定(8月、9月頃)
採用面接が通れば、8月か9月頃に内定がきます。採用は原則として翌年の4月1日からですが、社会人や既卒者は10月採用のパターンもあります。
既卒はまず公務員の種類を把握しておこう!
公務員は以下の3種類に分かれます。
- 国家公務員
- 地方公務員
- 公安系公務員
国家公務員は官公庁などの国家機関に勤める職員です。国の運営に関わる業務なので、職種によっては手当などの待遇は手厚い反面、海外転勤が多くある場合もあります。
地方公務員は都道府県や市町村で勤務する職員です。採用は各自治体で独自に行っており、転勤は少ないですが、部署移動が多い傾向にあるので、幅広いスキルが求められます。
公安系公務員は警察官や消防官などで勤務する職員です。試験内容は自治体によりますが、公安系公務員の試験は他の公務員と違い、剣道や柔道などの実技試験や、色彩検査があります。
既卒は一般枠で受験するのがおすすめ!
公務員試験には、一般枠と社会人枠の2種類の受験方法があります。一般人枠は新卒と同じ採用枠であり、社会人枠は社会経験が求められる採用枠です。
既卒はどちらで受験してもかまいませんが、社会人枠は小論文や面接で社会経験の高さを求められるので、経験不足の既卒には不利になる可能性があります。そのため、既卒は一般枠での受験をおすすめします。
既卒で公務員をめざす方法
既卒が公務員をめざす方法はさまざまですが、主な3つの方法を紹介します。それぞれのメリットやデメリット関しても記載があるので、参考にしてください。
1. 通信制の予備校
通信制の予備校は、授業の動画をパソコンやスマートフォンから視聴して勉強します。動画を利用すれば、クオリティの高い授業を気軽に受講できます。
しかし、分からないところがあっても講師にすぐ質問できないところや、勉強のスケジュールをご自分で管理しなくてはいけないところはデメリットです。従って通信制の予備校は、公務員試験に対して高いモチベーションを保てる人や、自分のライフスタイルに合わせて勉強したい人におすすめです。
2. 専門学校への進学
専門学校へ進学して勉強するのは、教員と対面で授業を受けられる点が魅力です。教員と対面で授業を受けると、授業で分からないところや疑問点があれば、すぐに質問できるので、スムーズに学習が進められます。また一緒に授業を受ける仲間もいるので、高いモチベーションを保って勉強できるのも魅力です。
しかし、専門学校は授業スケジュールがきっちり決まっていて受講しにくい、学費や交通費がかかるなどのデメリットもあります。そのため、専門学校への進学は時間や金銭的に余裕があり、スムーズに学習を進めたい人におすすめです。
3. 独学
独学は主に参考書や題集を購入し、自己流で勉強します。最近ではインターネット上に授業の動画が配信されているケースもあり、出費を抑えられる点が魅力です。しかし、独学はモチベーションを保ちにくいため、しっかりとした自己管理が求められます。
既卒が公務員をめざすときの注意点
既卒が公務員をめざすには、新卒で公務員をめざす場合や、民間企業の採用を受ける場合とは、いくつか異なる点があります。以下では、既卒が公務員をめざすときの注意点を紹介します。
公務員について理解しておく
近年、働き改革の推進で労働時間が見直されていますが、公務員は配属場所によっては残業が多い場合があります。また、公務員は成果を残しても評価されるシステムではなく、年功序列や勤続年数で給与が決まるのでモチベーションが保ちにくいです。公務員をめざす場合は、残業が多い可能性がある点や成果主義ではない点を、しっかり理解しておきましょう。
公務員には年齢制限がある
公務員試験を受けるには年齢制限があります。民間はスキルや経験が見合っていれば、多少年齢が違っていても採用されますが、公務員は年齢制限を超えたら受験できません。そのため、既卒で公務員をめざしていたけど、年齢を超えていたというケースも珍しくありません。年齢制限は自治体や職種によって異なりますが、おおむね30歳前後が多いようです。
またこの記事で紹介しているのは大卒程度の公務員についてですが、年齢(高校卒業してから2年以内の方など)により、高卒程度の公務員をめざせるケースもありますので、自分がどの区分をめざせるのか確認するのも大切です。
既卒がやるべき公務員試験の準備
以下では、既卒で公務員試験を受けるためにするべき準備について紹介します。
筆記試験の対策
公務員試験の筆記試験は難度が高いので、しっかりと対策をしましょう。試験は自治体や職種によって細かな違いはありますが、マークシート方式のテストや小論文が主な内容です。
筆記試験の対策方法には、通信制の予備校を利用する、専門学校に進学するほか、独学があります。まずは、自分のライフスタイルに合う勉強方法を選ぶのが重要です。
また既卒は勉強時間を確保しやすい反面、集中して勉強するのが難しいという人もいるかもしれません。公務員試験の合格をめざし、モチベーションを保って勉強しましょう。
面接の対策
既卒で公務員試験の面接を受けるときは、新卒と同様の受け答えをしても評価されない可能性があります。そのため、将来性を意識した既卒ならではの発言を心掛け、新卒と違うところをアピールしましょう。また、志望動機や自己PRなどはもちろん、「なぜ既卒者なのか」「どのような部署で働きたいのか」といった質問に明確に答えられると、評価につながりやすいようです。
既卒で公務員をめざす場合は、自分に合う方法で勉強することが大切
公務員試験は経歴に関わらず、試験の結果で採用が決まるので、既卒者であっても問題ないと考えられます。既卒者は勉強時間を確保しやすく、有利に働く反面、人によっては勉強へのモチベーションを保ちにくいようです。特に、「自分は独学は不向きである」と考える人は、予備校を利用するなどして、公務員試験の対策を進めるとよいでしょう。
仙台大原簿記情報公務員専門学校は、在校生の6人に1人が再進学者 と、既卒の人が公務員試験にチャレンジしやすい環境です。もちろん大卒程度の公務員もめざすコースもありますが、高卒程度の公務員をめざす1年課程のコースまで、めざしたい公務員に合わせてコースを選択することが可能です。また各科目に専任の教員が所属しているため、フォローが手厚いところも魅力です。既卒で公務員をめざしたい人は、ぜひご相談ください。
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