コラム
COLUMN
公務員
国家公務員の総合職と一般職は何が違う?待遇や仕事内容の違いについて解説
公のための仕事に携わる公務員は、大きく2種類に分かれており、そのうち国の業務に従事する公務員を国家公務員と言います。人事院によると、令和5年度末の時点で国家公務員は約59.0万人(予算定員)おり、公務員全体の17.4%を占めています(※)。
そのような国家公務員は、総合職や一般職など、複数の採用区分が存在するのが現状です。本記事では、国家公務員になりたい高校生・社会人を対象として、総合職と一般職の違いや、それぞれの試験内容などを解説します。
目次
国家公務員とは?
公務員とは、憲法により国民全体の奉仕者と規定され、公のための仕事に携わる存在です。公務員は大きく国家公務員と地方公務員の2種類に分けられ、国家公務員は国全体に関わる業務を行う公務員を指します。
公務員の種類(※1) |
役割 |
---|---|
国家公務員 |
国に勤務する公務員で、国全体に関わる業務を行う |
地方公務員 |
地方自治体(都道府県や市町村など)に勤務する公務員で、自治体の住民サービスなどの業務を行う |
人事院によると、国家公務員の役割は全体の奉仕者として、連携しながら政策を実際に前に進めていくことです(※2)。国家公務員は、政策・法令の立案や、行政サービスを提供するための予算・施設・人員の確保などの仕事を通じて、社会や国民生活を守り、豊かにするという重要な使命を帯びています。
国家公務員は省庁別採用のため、実際の仕事内容は配属先の各府省や担当するプロジェクトによって異なります。各行政領域において、好きなことややりたいことを見つけ、多彩なスキルや専門性を磨き上げていくことが可能です。転勤や人事交流などは必須ではないため、原則として希望に合った配属先を選べます。
人事院によると、各府省が担当するミッションは以下のとおりです(※3)。国家公務員としてどのようなキャリアパスを歩んでいきたいのか、各府省に配属された後のイメージをふくらませてみましょう。
各府省 |
担当するミッション |
---|---|
会計検査院 |
財政執行の監視人 |
人事院 |
国家公務員活躍のサポーター |
内閣官房内閣情報調査室 |
内閣の情報アドバイザー |
内閣法制局 |
法令・条約の審査役 |
内閣府 |
日本の未来を切り拓くデザイナー |
宮内庁 |
皇室のサポート役 |
公正取引委員会 |
市場の番人 |
警察庁 |
市民の安全 を守るリーダー |
個人情報保護委員会 |
個人情報の見張り番 |
カジノ管理委員会 |
クリーンなカジノの守り人 |
金融庁 |
金融で未来をデザインする |
消費者庁 |
消費者行政の舵取り役 |
デジタル庁 |
デジタル社会形成の司令塔 |
総務省 |
行政全体のマネージャー |
消防庁 |
災害対策の司令塔 |
法務省 |
社会の基本ルールのサポーター |
出入国在留管理庁 |
外国人施策の司令塔 |
公安調査庁 |
情報のプロフェッショナル |
国家公務員の総合職と一般職の違い
国家公務員には、総合職・一般職・専門職という3つの採用区分があります。人事院によると、それぞれの役割は以下のとおりです(※)。
国家公務員の採用区分 |
特徴 |
---|---|
総合職 |
政策の企画および立案または調査および研究に関する事務をその職務とする係員 |
一般職 |
政策の実行やフォローアップなどに関する事務をその職務とする係員 |
専門職 |
特定の行政分野に係る専門的な知識を必要とする事務をその職務とする職員 |
ここでは、そのうち総合職と一般職の収入や待遇面(昇給や休暇など)、勤務先・仕事内容の違いを簡単に説明します。
収入
人事院によると、令和5年4月の時点で、総合職と一般職の初任給や賞与(ボーナス)、もらえる諸手当には以下のような違いがあります。
|
総合職(※1) |
一般職(※2) |
初任給 |
<院卒者試験採用>268,000円 <大卒程度試験採用>236,440円 |
<大卒程度試験採用>229,440円 |
---|---|---|
賞与(ボーナス) |
期末手当、勤勉手当として、1年間に俸給の月額などの約4.4月分(6月、12月に支給) |
|
諸手当 |
扶養手当、通勤手当、住居手当、超過勤務手当など |
※初任給は、本府省に勤務する場合の俸給(行政職俸給表(一)2級)、本府省業務調整手当、地域手当の合計
通勤手当や住居手当などの諸手当は、基本的に総合職と一般職で明確な差はありません。しかし、初任給は同じ大卒程度試験採用の場合でも、総合職は236,440円、一般職は229,440円と、総合職の方がやや高くなっています。また賞与(ボーナス)の金額も、給与(俸給)の約4.4月分が支給される点は同様ですが、そもそもの給与金額に差があるため、総合職の方がもらえる金額が増える傾向にあります。
待遇面
次に昇給や勤務時間、休暇、休日などの待遇面の違いは以下のとおりです。
|
総合職(※1) |
一般職(※2) |
昇給 |
原則年1回 |
|
---|---|---|
勤務時間 |
1日7時間45分(職務の必要などに応じて異なる場合あり) |
|
休暇 |
・年次休暇20日 ・残日数は20日を限度として翌年に繰越し ・その他、病気休暇、特別休暇(夏季・結婚・出産・忌引・ボランティアなど)、介護休暇など |
|
休日 |
土・日・祝日・年末年始(12月29日~1月3日) |
実は総合職と一般職で、昇給の機会や年次休暇の取得日数といった待遇面の差はありません。ただし、両者のキャリアパスを比較した場合、一般的に人事異動のある総合職の方が昇進スピードが早いとされています。総合職として採用されれば、将来的に本府省ポスト(次官・局長・審議官・局次長など)に就ける可能性もあるでしょう(※3)。
【総合職のキャリアパスのイメージ】
年齢 |
本府省ポスト |
---|---|
58歳前後~ |
次官 |
56歳前後~ |
局長 |
52歳前後~ |
審議官・局次長 |
45歳前後~ |
課長 |
38歳前後~ |
準課長(室長、企画官) |
30歳前後~ |
補佐 |
27歳前後~ |
係長 |
23歳~ |
係員 |
その代わり、総合職の場合は20代から40代にかけて、海外勤務や地方勤務、他府省勤務、特殊法人への出向など、さまざまな人事異動を経験する可能性があります。
勤務先・仕事内容
国家公務員の総合職は、本府省を中心として採用され、主に政策の企画・立案や調査・研究に関する業務に従事します。一方、総合職の職員を補佐し、政策の実行やフィードバックなどに関する業務に従事するのが一般職です。一般職の場合、総合職と違って本府省での採用だけでなく、地方機関で採用される場合もあります。
イメージとしては、各府省の将来を担う幹部候補生となるのが総合職で、総合職をサポートし、事務作業などの定型業務に従事するのが一般職です。ただし、一般職として採用された人でも、意欲や能力が認められた場合は、幹部候補生として総合職と同じ業務に従事することも可能です。
総合職の特徴・メリット・デメリット
国家公務員の総合職は、一般職と比べてどのような特徴があるのかを紹介します。総合職を選ぶメリット・デメリットは以下のとおりです。
メリット |
・政策の企画・立案など、国を動かす仕事に関われる ・昇進スピードが速く、本府省の幹部候補生としてキャリアを形成できる ・国費留学の制度があり、国際的な舞台で活躍できる ・退官後も関係業界や独立行政法人などの再就職先がある |
---|---|
デメリット |
・人事異動(転勤や人事交流)があり、数年単位で配属先が変わる場合も ・総合職試験は出題範囲が幅広く、全ての区分で英語試験(TOEFL iBTやTOEICなど)の基準スコアクリアが必要 |
一般職の特徴・メリット・デメリット
国家公務員というと、本府省に勤務する総合職こそ花形というイメージがあるかもしれません。しかし、一般職にも他にはない特色ややりがいがあります。
一般職を選ぶメリット・デメリットは以下のとおりです。
メリット |
・高卒・短大卒・専門卒・社会人でも目指せる ・福利厚生が充実しており、総合職と同等の待遇を受けられる ・総合職と比較して、人事異動はあるものの頻度が少ない傾向にある ・意欲と能力次第では、本府省の幹部候補生として抜擢される可能性がある |
---|---|
デメリット |
・昇給・昇進は年功序列制が色濃く、昇進スピードがゆっくりしている ・本府省に配属されるとは限らず、地方機関や地方自治体で採用される可能性がある |
国家公務員総合職と国家公務員一般職の違いを知って、自分に合った進路を選びましょう。
国家公務員に向いている人の特徴
国家公務員に向いている人の特徴は、以下のような例が挙げられます。
- 国の業務に従事し、生活を守り豊かにする仕事をしたい人
- 政策・法令の立案に関わり、実現に向けて粘り強く取り組みたい人
- 国内だけでなく、海外のさまざまな地域で課題解決に取り組みたい人
- 自分の好きなことや興味関心のある問題をとことん突き詰めたい人
- ワークライフバランスが取れ、生活と両立できる仕事がしたい人
- 将来的に本府省の幹部職員として活躍してみたい人
一般的な傾向としては、本府省の幹部候補生となり、政策の中枢に深く関わりたい人が総合職に向いています。また総合職では、人事異動に伴って海外に活躍の場を移す場合もあるため、グローバルに活躍したい人にもおすすめです。
一方、一般職が向いている人の傾向は現場で着実にキャリアを積み上げていきたい人です。一般職は総合職よりも人事異動が少なく、一定のエリアのみでの転勤も可能なため、しっかりと地に足をつけて働きたい人にも向いています。また総合職と違って、高卒や短大卒、専門卒の場合でもめざせるのが一般職の特徴です。
国家公務員の試験内容(総合職・一般職)
ここでは、国家公務員をめざす高校生・社会人(既卒、第二新卒)向けに、国家公務員の試験内容(総合職試験・一般職試験)を紹介します。
総合職試験の内容
総合職試験には、大きく院卒者試験と大卒程度試験の2つの区分があります。試験は筆記試験が行われる第1次試験と、面接(人物試験)や英語試験などが行われる第2次試験に分かれており、両方への合格が必要です。
また総合職試験は、春試験(教養区分以外)と秋試験(教養区分)の2つの実施時期があり、社会人へも門戸が開かれています。総合職試験の受験資格や主な試験種目は以下の表のとおりです(※)。
|
院卒者試験 |
大卒程度試験 |
|
受験資格 |
30歳未満で大学院修了または大学院修了見込みの者 |
21歳以上30歳未満の者(教養区分は、その試験の名称に掲げる年度の4月1日現在における年齢で19歳以上30歳未満の者が受験可) |
|
---|---|---|---|
試験種目 |
第1次試験 |
基礎能力試験(多肢選択式)、専門試験(多肢選択式) |
基礎能力試験(多肢選択式)、専門試験(多肢選択式) |
第2次試験 |
専門試験(記述式)、政策課題討議試験、人物試験、英語試験 |
専門試験(記述式)、政策論文試験、人物試験、英語試験 |
※院卒者試験は法務区分以外の区分、大卒程度試験は教養区分以外の区分の試験内容を掲載
一般職試験の内容
一般職試験には、大卒程度試験と高卒者試験の2つの区分があり、4年制大学を卒業していない人(短大または高専を卒業しているか、卒業見込みの人)も、大卒程度試験を受験できます。
一般職試験も総合職試験と同様に、第1次試験と第2次試験に分かれていますが、第2次試験は面接(人物試験)のみです。以下は一般職試験(大卒程度試験)の概要です(※)。
|
大卒程度試験(行政区分の試験内容を掲載) |
|
受験資格 |
21歳以上30歳未満の者 |
|
---|---|---|
試験種目 |
第1次試験 |
基礎能力試験(多肢選択式)、専門試験(多肢選択式)、一般論文試験 |
第2次試験 |
人物試験 |
大卒程度試験は、基礎能力試験や専門試験、人物試験などの試験種目があり、しっかりとした試験対策が必要になります。
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▲国家公務員一般職を含めた、高卒程度区分の公務員をめざすならこのコース。
国家公務員の一般職と総合職の違いを知り、自分に合ったコースを選ぼう
国家公務員には、幹部候補生として本府省を中心に採用される総合職や、総合職をサポートし、定型的な事務作業に従事する一般職などの採用区分があります。それぞれ試験内容や受験資格が異なるため、早い段階からの進路決定が大切です。
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